ガーデン、公園、庭園、そして里(上)

 夏至も過ぎて既に7月である。5月から6月にかけてさまざまなところに出掛けてきた。年金者組合のウオーキングにはよく参加しており、その話も書いてはいるが、今回はそれではない。家人を伴っての個人的な散策である。年老いてだいぶ弱ってきた我が家の老猫「サスケ」(ブログに初登場である-笑)の世話があり、本人にも足腰の痛みがでたりで、このところ家人と共に遠出することは少なくなっていたが、最近どうやら痛みも薄らいできたようで、出歩く意欲が復活してきたのかもしれない。老化を防止するためには歩くことがとりわけ大事なようだから、お互いにとって喜ばしいことである。気分転換にもなる。

 年金者組合のウオーキングであれば、決められた集合場所に集まればあとは付いていくだけであるが、個人的な散策となると、出掛ける先を自分で決めて、目的地までのルートを確認し、食事を摂る場所も探さなければならない。旨いものを食べたいと思えば、予約も必要となる。こうした作業は、面倒と言えば面倒だが惚け防止にはもってこいなのではあるまいか。せっかくだから、できればいい写真を撮れそうな場所を選んでみた。混雑しそうな土日は避け、天気の様子も見ながら気儘に日程を組むことができるので、この辺りが高齢者にとっての特典なのかもしれない。

 まず最初に出掛けたのは、横浜市の西区にあるイングリッシュ・ガーデンである。バラ園としてよく知られたところのようだが、これまでに一度も行ったことがなかった。その理由だが、自分にもよくわからない。近くにあるので、何時でも行けると思っていたからなのかもしれないし、花にそれほどの興味・関心がなかったからなのかもしれない。横浜駅からバスでも行けるところのようだったが、なにせ本数が少ないのでタクシーを利用した。大した距離ではない。バラの盛りは過ぎつつあったが、花はまだまだ十分に堪能できた。好天に恵まれたこともあって、人出も予想以上に多かった。

 イングリッシュガーデンとは、イギリスでよくみられる草花や樹木を自然の姿のまま取り入れた庭の形式を言うらしい。ありのままの自然の美しさを大切にし、人の手を加えすぎないガーデニング法であるとのこと。人工美を誇るいささか華美なフランス式の庭園とは大分趣が違う。こちらは私の好みではない。イングリッシュガーデンには風景庭園とコテージガーデンの二つがあるようだ。風景庭園は湖や川など風景を入れて庭を作っていくので、広い土地が必要となるが、コテージガーデンは、その土地に根ざした植物を活かした一軒家向きの庭造りのことだという。近くに風景庭園があったら是非とも行ってみたいところだが、都会の近くにそんな庭園を造れるはずもないので、まあ無理であろう。見たければ本場のイギリスにでも行くしかない。

 ところで、このイングリッシュガーデンだが、ホームページによれば、横浜市の花であるバラを基調とした庭としてつくられており、2,200種ものバラを中心に、横浜の気候風土にあった草花や樹木を散りばめて何年もかけて育てているとあった。そんなふうに書かれているだけあって、一見の価値があるなかなか見事な庭園だった。さすが「優秀庭園賞」を受賞しただけのことはある。入口はバラのトンネルとなっていて何ともゴージャスである。トンネルを抜けると、敢えてあちこちに素朴さを残した造りとなっていた。しかしそれにしても、横浜の市「花」がバラだとは知らなかった。そういえば、市「歌」の作詞者が鴎外だと言うことも、しばらく前まで知らなかった。帰りはバスで横浜に戻って、昔とはすっかり様変わりした地下街で食事をした。こちらは、もう少しゴージャスだったらいいのにと思った次第(笑)。

 次に出掛けたのは公園である。町田駅からバスで20~30分のところにある薬師池公園に出掛けてきた。家人は初めてだったが、私はここに3度ほど来たことがある。バスを降りると公園の裏門になり、そこから森の中の道を降りていくと菖蒲園に出る。知り合いのFさんも自慢していたが、手入れが行き届いた立派な公園である。ここのホームページを眺めると、薬師池は、1982年には「新東京百景」に、1998年には「東京都指定名勝」に指定され、さらに2007年には「日本の歴史公園100選」に選定された町田市を代表する公園である、と書かれていた。確かにそれだけのことはある。

 他には次のようなことも記されていた。「園内中心部には池があり、梅、椿、桜、花しょうぶ、大賀ハス、新緑、紅葉等、四季折々の彩が訪れる人々を楽しませてくれます。また、江戸時代の古民家2棟(旧永井家住宅と旧荻野家住宅)が移築されていて、当時の暮らしなどを感じることができます。池のほとりの「やくし茶屋」では甘酒、抹茶等をお楽しみいただけます。フォトサロンの北側には市制施行40周年記念モニュメント「自由民権の像」も建立されています」。以前顔を出した時も、「しょうぶ・あじさいまつり」の最中だったから、やはり花を見に来る人が多いのであろう。見るだけではなく写真撮影に来る人も多いようで、大きなカメラを手にした人と何度もすれ違った。

 今回は人もまばらだったのでゆっくりと花を観賞することができた。薬師堂の境内で、町田駅のプロムナードで買ったおにぎりを食べ、「やくし茶屋」で紫蘇ジュースやコーヒーを飲み、団子を食べた。さほど期待はしていなかったが、どれもこれも美味だったのには驚いた。花に気を取られてこれまでたいして見もしなかった古民家や水車や蓮池や橋も、のんびりと眺めてきた。それにしても、この公園で圧倒的な存在感を示しているのは、三橋國民さんが制作した「自由民権の像」であろう。ニューギニア戦線で九死に一生を得た彼だからこその作品である。薬師池公園のあるこの野津田の地は、石阪正孝の名とともに知られた神奈川の自由民権運動の「聖地」とも言うべき場所であり、この私は、何時も来る度に熱い思いでこの像を見上げる。今回もまたそうだった。

 

PHOTO ALBUM「裸木」(2024/07/05

イングリッシュガーデンにて(1)

 

イングリッシュガーデンにて(2)

 

薬師池公園にて(1)

 

薬師池公園にて(2)