横浜市長選挙騒動記(一)

 8月22日は横浜市長選挙の投開票日だった。夜の8時になったので、飲み物片手に開票速報でも見るかなどと思っていたら、応援していた山中竹春候補があっという間に当選確実となり、速報にどきどきする間もなかった(笑)。開票率0パーセントで当確を出すのを「ゼロ打ち」と言うようだが、まさにその「ゼロ打ち」である。内心では山中さんが勝ちそうな気もしてはいたが、結果は最後までもつれるのではなかろうかなどと思っていたので、何ともあっけない幕切れだった。最終的には50万を超える得票で、相手の小此木八郎候補に18万票もの差を付けたので、まさに文字通りの圧勝、大勝、完勝である。

 私の場合、ブログにはいわゆる政治の話はできるだけ書かないようにしている。その理由について一言触れてみる。政治に無関心だというわけではないから、自分なりのスタンスは持っている。自称「国際弁護士」の八代英輝に、「暴力革命」の政党としてテレビで紹介された日本共産党の昔からのファンである(笑)。ファンとは言っても、結構言いたいことは遠慮せずに言う方なので、いささか冷めたオールド・ファンの一人に過ぎない。

 そんな私から見ると、八代などはどう見ても雰囲気だけは上品な「国策弁護士」にしか見えなかった。はっきり言えば、こうした何ともいい加減な人物がたむろし、したり顔や訳知り顔、物知り顔であれこれと語るような政治評論の世界が肌に合わないし、嫌いなのである。こうした感覚は、論者の政治的立場の左右を問わない。もっと落ち着きや羞恥心があってもいいのではないか、などと思ったりもするからである。もっとも、「俺様」病とか「どうだ」病に罹っている人など、どの世界にもいるので特段珍しくはないのであるが…(笑)。

 それはともかくとして、政治の話に関しては実に多くの自称専門家や自称評論家、自称有名人の方々が数多いて(笑)、あっちこっちであることないことに自信たっぷりで触れておられるので、情報通でもない私のような素人が何かを書いたとしても、いわゆる「床屋談義」の域を出ないに決まっている。そんな話を誰も読みたくはなかろう(笑)。この私も、まともな「政論」の話ならともかく、「政局」の話などには興味も関心もないので、御免被りたいと思うような人間である。自分が読みたくもないことを、自分で書くわけにはいかない。

 結論を言えば、政治の話は避けておくのが無難だなどと思って書かないのではなく、書くほどのことがないから書かないだけである。ときどき皮肉めいたことをちらっと呟くことはあるが、せいぜいその程度である。では何故今回「横浜市長選挙騒動記」などといったタイトルでブログに投稿する気になったのであろうか。それは、私が今回の市長選挙の顛末を、身近で体験することになったからである。身近で体験とは言っても、私のことだから、市民運動の周辺や底辺でうろちょろしていて気付いただけのことに過ぎない。しかしそれでも、あれこれの人間模様に感ずるものはあったし、ブログに投稿したくなるような出来事もあった。そんな話は、どうしたわけかネットの世界ではほとんど触れられてもいなかったのだが…。

 定年退職後、地元の社会運動に関わりをもつようになった経緯については、既にブログに書いたことがある。老後の運動(sports)不足を補うなどとうそぶいて、地元の社会運動(movements)に顔を出すようになったのである。いささかふざけてはいるが、案外本音のところもある。別に自ら率先して社会運動に顔を出したわけでも何でもない。私の経歴を知った人から熱心に誘われたのである。気の弱い私などは、誘われると断りにくくなってしまい困ることになる。しかし、それもまた自分の性分なので仕方がなかろう。先のような「実利」もあるので尚更である(笑)。

 昔労働科学研究所で働いていた頃に、藤本武さんから次のような話を聞いた。就職するにあたってある方を友人と二人で訪ねたところ、その方から「何か運動はやっていたかね」と聞かれたらしい。藤本さんは、てっきり学生運動のことだろうと早とちりして、どう答えたものかどぎまぎしていたら、隣の友人から「スポーツだよ、スポーツ」と小声でアドバイスされたのことである。なかなか面白い話だと思ったので、これを一捻りして使わせてもらっているのである。

 「区民の会」のような市民運動に顔を出すからには、勿論ながら理念や政策に共鳴するところがあったわけだが、だからといってその運動が真善美に溢れた如何にも立派なものだなどとは、まるで思っていない。会の代表の一人でもある私が、こんなことを書いていいものかどうか迷うところだが、いろんな人々が集まってくるので(なかには一癖どころか二癖もある人がいる。きっと私もその一人に違いなかろうー笑)、いろんな議論が交わされるし、面白いこともあるが面倒でうんざりすることもある。言ってみれば世の中の縮図のようなものである。

 人間を観察するには恰好な場ではあるのだが、じっくりと観察するためには、運動のなかに身を投じなければならない。惚け防止には最適なようにも見えるが、運動が熱を帯びてくると、真面目な方が多いので、時折「適度」を越えて「過度」な惚け防止になることもある。その辺りが問題であろう(笑)。スポーツでも社会運動でも、大事だし必要なのは身の丈に合った「適度」な運動なのではあるまいか。「不老長寿」ならぬ「不良長寿」という言葉もあるぐらいなので、あまりに真面目になり過ぎないように心掛けているつもりである。奮戦記や見聞記ではなく、あえて茶化して騒動記などとしたのも、そうした心構えのなせる技である(笑)。

 そんな話はほどほどにして本題に戻ろう。前置きが長いのが私の何時もの悪い癖である。市長選挙の結果は先に触れた通りたが、あそこまでの地滑り的な勝利がもたらされたのは、相手側にいくつものボタンの掛け違いがあり、それを糊塗するために「二枚舌」とならざるを得なかったからであろう。それに対し、市民の側にはそう簡単には諦めない「二枚腰」の粘りがあった。今回の市長選挙は、「二枚舌」と「二枚腰」の戦いだったようにも見える。

 最初のボタンの掛け違いであるが、これが何とも酷かった。林前市長は前回の市長選挙で、カジノを含むIR(統合型のリゾート施設)の誘致に関して、「白紙」だと明言して当選した。ところが、どうしたことか任期途中で勝手に誘致を表明し、自民党と公明党に所属する議員が多数を占める市議会で、誘致が承認されるというとんでもない事態となったのである。

 これはもう誰が見ても明らかな市長の「変節」であり、市長と自公議員の「共謀」であり、両者の「馴れ合い」であった。そう言わざるを得なかったのは、市長選挙の後に行われた市議会議員選挙に際して、自公の議員は、カジノ誘致の是非に関してほぼ全員がだんまりを決め込んでいたからである。市長が「白紙」だと言っているのだから、わざわざ触れる必要はないとしらを切って当選したのである。市長は議会の承認を得たと言い、議会は市長の提案を尊重したなどと言い繕っていたので、お互いが自らが負うべき誘致の責任を隠蔽しようとしていたことになる。結局のところ、両者ともに市民の審判を一度も仰ぐことなくカジノの誘致を決めたのであり、そこには羞恥心の欠片もなかった。

 今回の話はもともとは一回で終えるつもりで書き始めたのだが、書き出したらあれもこれも触れたくなって、なかなか筆が止まらない。「やめられない、とまらない」のCMで知られるカルビーの「かっぱえびせん」状態である(笑)。柄にもなく妙に興奮しているからなのかもしれない。何ともお恥ずかしい限りではあるが、こうなったら最後までこの調子で続けるしかなかろう。予定の字数も既に大幅に超えてしまったので、お楽しみの続きは次回あるいは次々回ということで。そんなに続けるつもりなのかと呆れられそうではあるのだが…。