新緑の季節を歩く(一)-「里山ガーデン」へ-

 前回まで、「早春の上州紀行」と題して長々とブログに原稿を投稿してきた。実はこの紀行文はまだ終わってはいない。あと2~3回続きそうなのだが、どうも途中で飽きてきてしまった。いま飽きてきたなどと書いたが、エンディングがなかなか難しく、どんなふうに収まりを付ければいいのか迷っているというのが、ほんとうのところなのだが…。そんな時に無理矢理パソコンに向かってみても、いい知恵が浮かぶはずもない。「下手の考え休むに似たり」と言う諺もあるので、気分転換を兼ねてまったく別な話を途中に入れてみることにした、

 今日は6月1日。5月はあっという間に過ぎ去ったような気がしないでもない。五月晴れの日はいったい何日ほどあったのか。案外少なかったのではないか。毎月行われる年金者組合のウオーキングに、私が毎回参加していることは、このブログの読者の方は知っておられることだろう。3月までのウオーキングについては既に投稿済みなので、今回はその後の話を書いてみることにした。

 4月の下旬に、横浜市の旭区にある里山ガーデンに出掛けた。この日は好天に恵まれたので、文字通りの散策日和であった。少し暑すぎるぐらいだったかもしれない。旭区にある里山ガーデンと言っても、ほとんどの方はピンとこないであろう。ズーラシアの名称で知られる横浜動物園の先にある森林公園である。ズーラシアには何度か出掛けたことがあるが、その先にある里山ガーデンに顔を出すのは今回が初めてである。

 里山ガーデンの隣には四季の森公園が広がっているのだが、ここには何度も足を運んだ。池があり、森があり、田圃があり、遊園地がありで、小僧や小娘達にとってはなかなか愉しい場所だからである。昔この四季の森公園を抜けて里山ガーデンに向かったことがあったが、途中道なき道を歩くようなことになり、周りには誰もいないところだったので、通り抜けられるのかどうか不安を覚えたことがあった。何とも奇妙な体験であった。その時は結局里山ガーデンには辿り着けなかった。

 横浜線の中山駅に集合したわれわれ一行は、バスでズーラシアに向かい、正門の先にある北口バス停で降りた。里山ガーデンはそこからすぐである。今回この場所が選ばれたのは、3月末から5月初めにかけて「里山ガーデンフェスタ」が行われていたからである。毎年春と秋に期間限定で公開されているらしい。昨年も同じような時期にここに出掛ける企画があったかのではなかったかと記憶しているが、コロナの影響でフェスタが中止となったために、ウオーキングは別の場所に変更になった。

 今年は「里山ガーデンフェスタ」が1年ぶりに開催されることになったので、里山ガーデンの名物である大花壇を見に出掛けたのである。里山ガーデンは、「横浜どうぶつの森公園」として整備が進められている場所の一部であり、今回のフェスタは、山下公園を初めとした「みなとエリア」で開催されている「ガーデンネックレス横浜2022」のイベントの一環として行われているのだという。「ガーデンネックレス」とはなかなかオシャレなネーミングである(笑)。そう言えば、昔タイガースの加橋かつみが歌っていた「花の首飾り」(1968年)という曲があった。清潔で透明感のある彼の歌声が好きだったが…。

 園内に入って少し歩くと、お目当ての花壇が現れる。 普段は一般公開されていない、市内で最大級の約1万平方メートル にも及ぶ大花壇である。われわれは斜め上から見下ろす場所に立って花壇を眺めたので、広々とした花畑が一望された。確かに素晴らしい。反対側の展望デッキからの眺めも一見の価値はある。 横浜市内産のパンジーやビオラのほか、 ネモフィラやラナンキュラス、キンギョソウ、チューリップそして私の知らない花々が咲き誇っていた。ネットの紹介記事には、 春のパステルカラーで彩られていると書かれていたが、心が躍るような美しい表現である。今回のフェスタのテーマは 「幸せの花景色」だそうだが、こちらはどうなのだろう。いささか陳腐な気もしないではなかったのだが…(笑)。

 この大きな花壇を廻ってたくさんの美しい花々を見ているうちに、少し不思議な感覚を覚えた。食傷とまでは言わないが、満腹感を覚えたのである。感動というものは、そうそう長続きはしないとでも言えばいいのか。大パノラマの花壇は確かに素晴らしいのだが、こちらが年寄りの所為もあってなのか、徐々に飽きてきていささか鬱陶しくなってきた。

 そこで、大勢の見物客がいる花壇を離れて、静かな森に入ってみた。そこには派手さはないが落ち着きが感じられたし、いつまでいても飽きがこない。高く伸びた木々の先には4月の晴れ渡った空が見える。森の中には木漏れ日も射している。駅前で買ってきたちょっとだけ立派な弁当を広げてみた。こうしたところで食べる弁当は、何時も旨い。大花壇はもう若い人たちのものなのだろう、そんな気がした。

 今回のウオーキングは、現地で解散ということになったので、一人で森を散策し写真を撮って帰宅することにした。里山ガーデンの入口にあった案内所で中山に向かうバスの便を訪ねたところ、大分離れたバス停を教えてくれ、そのバスは1時間に1本しかないとのことだった。そのまま鵜呑みにしそうになったが、どう考えてもおかしいので、案内所を離れて別の方に尋ね直してみた。そうしたら、ズーラシアの正門まで無料のシャトルバスが出ているので、それに乗って正門で降り、そこで中山行きのバスに乗り換えてくれとのことだった。無駄に歩くことも待つこともなく、スムーズに帰宅できた。

 期間限定の「里山ガーデンフェスタ」なので、案内所の方々は恐らく全員がアルバイトの人だったのであろう。この辺りの交通事情をよく知らなかったために、マニュアル通りに教えてくれたようだった。花を見て森をのんびり散策した後だったので、特に気を悪くすることもなかったが…。大花壇も悪くはないが、野にひっそりと咲く名もなき花もいい、そんな思いを抱いて帰宅した。我が家の小さなベランダにも花が咲いている。柄にもなく花が好きだからである。好きだが愛でるほどではないので、名前はすっかり忘れてしまっている。