団地の新聞『ポポラーレ』のこと(上)

 私の住んでいるメゾン桜が丘団地には、まったくの手弁当で作られている判型A3の『ポポラーレ』という名の団地新聞がある。季刊なので、冬号(1月)、春号(4月)、夏号(7月)、秋号(10月)の年に4回発行されており、つい先だって13号となる冬号を配ったばかりである。創刊号となる第1号は2021年の1月に発行されているから、あれから丸3年を経て現在は4年目に入ったところである。『ポポラーレ』という新聞の名称が、ユニークでありかつまたオシャレである。命名者は、新聞の世話人を無理矢理務めてもらっている宮内淳吉さんである。彼はモザイク画やフレスコ画の作家として知られており、昨年秋にあざみ野アートホーラムでこれまでの画業の集大成となる個展を開いた。この私も、絵が好きなので勿論見に出掛けた。

 そんな芸術家の宮内さんだからこそ、『ポポラーレ』といった一風変わった名称が浮かんだのであろう。覚えやすくもあって、直ぐにみんなに馴染んだ。もうすぐ米寿になろうという御大の宮内さんを支える編集スタッフとして、編集長の保田さんが推挙され、それに手伝いの私が加わった。保田さんは編集技術のプロでもあるので、新聞の割り付けや印刷で毎回お世話になっている。この私はと言えば、毎号記事を書くことで協力させてもらっている。3年前の創刊号の「編集を終えて」に、私は以下のようなことを書いた。紹介してみる。

 メゾン桜が丘団地に暮らすすべての住民の皆さんを対象に、 団地新聞のようなものを作ってみようという話が持ち上がってから大分時間が経ちましたが、 編集に協力いただける方々も決まって、ようやく具体化の運びとなりました。 新聞のタイトルは「ポポラーレ」となりました。英語のポピュラーと同じ意味のイタリア語です。 この言葉のように「庶民的」 で 「人気のある」、そして「楽しい」新聞として育っていくことを願っております。 今のところ年に2~3回の発行を目指しております。私たちの住む団地も、できてからはや34年を迎えております。 建物も周りの環境も関係者の皆様のご努力で申し分のない状況にありますが、それに加えて、住民どうしのつながりがより豊かで和やかで親密なものになれば、もっともっと暮らしやすい団地になるのではないかと思っております。

 また、団地内にはさまざまな分野で活躍されていたり、興味深い趣味をお持ちの方々もたくさんおられるようですので、そうした方々のお力添えもいただければ幸いに存じます。メゾン桜が丘団地に暮らす方であれば、誰もが自由に、気軽に、思うことを、遠慮なく投稿できる場にしていきたいと思っておりますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。 なお、 右記の要領で原稿を随時募集しておりますので、どうぞお気軽にご応募ください。

 以上が「編集を終えて」の全文であるが、その脇には「『ポポラーレ』の原稿を募集しています!」と銘打った文章もあり、「『ポポラーレ」の原稿を募集しています。 下記のメールアドレスに送付していただければありがたく存じます。 メールを送付される時にはお名前を記していただきますが、 掲載の際は号棟とイニシャルのみとさせていただきます。原稿はタイトルも含めて600字以内といたします。 もちろんながら短い原稿大歓迎です。 写真を掲載したい方は、 添付ファイルでお送りください」と書かれている。。

 当時はまだ発行回数が確定していなかったが、これはその後年4回となった。季刊なので分かりやすい。これまでのところ発行期限に遅れたことはない。投稿を掲載する際の号棟や氏名の表記は執筆者の判断に任せることになった。せっかく書いたのだから読んでもらいたいと思う方がいる反面、自分が書いたのが分かると恥ずかしいので書くのを遠慮したいと思う方もいる。私は(T)で書いているがどんな表記でもよくなった。また原稿の分量も、当初は600字以内としていたが、今はそれを目安としつつも長短どちらでもかまわないことになっている。より自由度を高めたのである。

 印刷にかかる費用は、賛同者の寄付によってまかなわれている。しばらく前まではA3の両面とも白黒で印刷していたが、これだと400部印刷しても4,000円止まりでそれほどの金額ではない。しかし、10号の発刊を記念してこの号の表だけカラーで印刷にしたら、これがかなり好評だったためにその後表面のカラー印刷が定着してしまった。確かにカラー印刷だと写真が綺麗で見た目もいいから、いまさら止めるわけにはいかなくなったが、これだと印刷費は10,000円に跳ね上がる。今のところは多くの方々の募金で何とかまかなえているが、先々の心配の種ではある。『ポポラーレ』は誰もが自由に投稿できる新聞で、団地の居住者全員に配布しているのだから、自治会から若干の援助を仰ぐことなども考慮されてもいいのかもしれない。

 私は「近隣散策」と題して、あちこちに出掛けた話をシリーズで書いている。地元の年金者組合に加入している私は、毎月企画されているウオーキングに参加しており、出掛ける度にブログに原稿を書いているので、その中から面白そうなものを選んで短く書き直し、『ポポラーレ』に投稿しているのである。それ以外では、「編集を終えて」も書くようになった。しばらく前までは編集長の保田さんが担当されていたが、原稿の督促やら編集の仕事で慌ただしそうなので、私が引き受けることになった。こちらもブログ同様老後の道楽である。最新号には以下のような文章を書いた。

  皆さん、明けましておめでとうございます。 この「ポポラーレ」も、今回の13号で4年目の新年号となります。ここまで続けてこれたのも、ひとえに皆さんのご支援の賜物です。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。2024年は思ってもみない年明けとなりました。 元日の夕方に能登半島で大地震が発生したからです。この原稿を書いている1月10日の時点で、死者の数は200名を超えました。 その後刻々と飛び込んでくる現地の惨状を目の当たりにして、正月気分はすっかり吹き飛んでしまいました。

 能登には二度ほど家人と出掛けたことがあり、二度目の時にはレンタカーで半島を一周しました。 あまりにも思い出深い地なので、とても他人事とは思えません。極寒の下で、水や電気や食糧に加えてトイレも暖房も風呂も不足したままの、あまりにも過酷な避難所暮らしを余儀なくされている被災者の方々のことを思うと、いたたまれなくなります。亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、避難された方々には踏ん張って何とか生き抜いてもらいたいと願うばかりです。政府は、被災地支援のために予備費から47億円ほど支出するとのことですが、それにつけても、 万博会場に作られる木のリングに350億円もかけるというのですから、その違いがあまりにも際立っていて唖然とするばかりです。 こちらもまた、もう一つの日本の惨状なのでしょう。 

 

PHOTO ALBUM「裸木」(2024/03/22

木の芽立ちの頃(1)

 

木の芽立ちの頃(2)

 

木の芽立ちの頃(3)